この記事は、厚生労働省・労働局が公開している資料をもとに制度の考え方を紹介するものであり、法令の全文ではありません。自院の宿直・日直が実際にどう扱われるかは、必ず顧問社会保険労務士や所轄の労働基準監督署にご確認ください。
宿日直許可について調べると、必ず「宿直は週1回、日直は月1回」という回数が出てきます。では、これは病院全体の回数なのか、医師1人ごとなのか。兼業先で入る宿直も合わせて数えるのか。医師が足りない病院はどうすればよいのか。当直表を組む立場で迷いやすい点を、厚生労働省の通達とFAQに書かれていることに沿って整理します。
そもそも何の回数か:宿日直許可を受けるための条件
宿直・日直のうち、ほとんど労働をする必要のない勤務は、労働基準監督署の許可(宿日直許可)を受けることで、労働時間の規制の対象外として扱えます。その許可の基準(昭和22年9月13日発基17号)のひとつが、回数の限度です。医師・看護師等については、令和元年7月1日の通達(基発0701第8号)で細目が定められていますが、そこでも「一般の宿日直の許可の際の条件を満たしていること」が求められており、回数の限度はそのまま当てはまります。
- 宿直勤務については週1回が限度
- 日直勤務については月1回が限度
つまり、この回数は「宿日直許可を受けた勤務」として扱うための条件です。許可を受けていない当直は、そもそも通常の労働時間として数えることになります(詳しくはこちらの記事)。
数え方1:宿直と日直は別々に数える
限度は「宿直は週1回」「日直は月1回」と別々に示されています。宿直を週1回入れているから日直は入れられない、という関係ではなく、それぞれの限度の中に収まっているかを見ます。
数え方2:医療機関ごとに数える(兼業先の宿直は別)
本務先と兼業先の両方で宿直に入る医師について、厚生労働省のFAQは次のように答えています。
宿日直許可の回数の限度は、医療機関ごと(本務先と兼業先それぞれ)で認められた回数を示している。同じ週に本務先で1回、兼業先で1回、宿日直許可のある宿直の業務に従事することが可能。(厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」より要約)
ただし同じFAQでは、複数の勤務先で宿日直に頻繁に入ると、通常の勤務と合わせて長時間の拘束につながることへの配慮も求めています。回数の上では認められても、医師の負担として適切かは別に考える必要があります。
数え方3:「週」の区切りは、許可を受けた内容に合わせる
今回確認した厚生労働省の通達・FAQには、「週」を暦の週(例えば月曜〜日曜)で区切るのか、連続する7日間で見るのかを定めた記述は見当たりませんでした。許可の際に交付される「断続的な宿直又は日直勤務許可書」には、宿日直の回数などに関する「付かん」(条件)が記載されており、 FAQではその内容に沿って勤務させるよう求めています。まずは自院の許可書の「付かん」を確認し、不明な点は労働基準監督署に確認しておくのが確実です。
区切り方が決まっていなくても、同じ医師の宿直の間隔を7日以上あけておけば、どう区切っても「週に2回」になることはありません。当直表を組むときの安全な目安になります。
回数を超えて許可される場合がある
医師が少ない病院では、週1回・月1回ではとても回らない、ということもあります。基準では、次の要件を満たせば、宿日直の業務の実態に応じて、回数を超えて許可する場合があるとされています。
- 事業場に勤務する18歳以上の者で、法律上宿日直を行うことができる全員が宿日直をしても、なお人数が足りない場合
- 勤務の労働密度が薄い場合
厚生労働省のFAQによれば、実際に宿直週2回や日直月2回といった形で認められたケースがあります。特に、医師が不足する地域で、週末に「土曜の夜の宿直 → 日曜の昼の日直 → 日曜の夜の宿直」と続けて入るいわゆる連直の体制を確保するため、遠方から非常勤の医師に来てもらう、といった実態を踏まえた例外が認められています。東京労働局の資料にも、院長と勤務医2人の病院で、他院から来る嘱託医の日直に限り月2回を許可した事例が紹介されています。
連直のように同じ週に宿直が2回入る組み方は、週1回の原則を超えます。例外の許可を受けていない場合は、許可の範囲外の勤務になるおそれがあります。自院の許可書の「付かん」に回数の例外が認められているかを確認してから組むようにしてください。
回数を守っていても、実態が伴わなければ労働時間になる
回数の限度はあくまで条件のひとつです。許可を受けた宿直中に、突発的な事故による応急患者の診療や入院、患者の死亡、出産への対応など、通常の勤務時間と同じような業務をすることがまれにあっても、常態としてほとんど労働がなく、夜間に十分な睡眠がとれるのであれば、許可は取り消されません。ただしその業務をした時間については、時間外労働の手続きをとり、割増賃金を支払う必要があります(基発0701第8号)。こうした業務が「まれ」ではなく常態になっている場合は、そもそも許可の対象になりません。
また厚生労働省のFAQでは、宿日直許可を受けた宿日直のうち9時間以上連続したものは、勤務と勤務の間の休息時間(勤務間インターバル)として扱えることも説明されています。
当直表を組むときのチェックポイント
- 許可は、所属診療科・職種・時間帯・業務の種類などを限って受けることもできます(基発0701第8号)。自院で許可を受けている当直と、受けていない当直を、当直表の上でも分けておく
- 許可を受けている当直は、医師1人ごとに「宿直は週1回、日直は月1回」を超えないように割り当てる
- 連直など回数の例外が必要な組み方は、許可書の「付かん」で認められているかを確認する
- 兼業先でも宿直に入る医師は、回数は別に数えられるとしても、合計の負担に配慮する
当直シフトナビでは、当直の間隔(中N日)や医師ごとの月の上限回数をルールとして登録すると、それを守った当直表を自動で作れます。例えば当直どうしの間隔を「中6日」にすれば、同じ医師の当直が7日以内に2回入ることはありません。
宿日直手当の額の決まりについてはこちらの記事で、時間外労働の上限規制の全体像はこちらの記事で解説しています。