この記事は、厚生労働省の通知をもとに計算の考え方を紹介するものであり、通知の全文ではありません。届出に使う数値の計算や、自院の病棟が対象になるかどうかは、必ず通知の原文と地方厚生(支)局の案内を確認してください。診療報酬の改定で内容が変わることがあります(この記事は令和6年度改定の通知をもとにしています)。
看護の勤務表を作るときに必ず意識するのが「月平均夜勤時間72時間」です。ただ、何を夜勤時間として数えるのか、誰を平均の分母に入れるのか、2交代の病棟は対象なのか、といった細かい点はあいまいになりがちです。厚生労働省の通知(令和6年3月5日保医発0305第5号)の記載に沿って整理します。
72時間は「入院基本料の施設基準」の要件
「72時間」は労働基準法の上限ではなく、入院基本料を算定するための施設基準のひとつです。夜勤を行う看護職員の1人あたりの月平均夜勤時間数が72時間以下であることが求められます。満たせなくなった場合は、条件付きで「月平均夜勤時間超過減算」による入院基本料を算定する(満たせなくなってから直近3か月に限る)といった扱いになります。
なお、療養病棟入院基本料を算定する病棟の看護職員はこの限りではないとされ、また一部の特定入院料を算定している病棟の看護要員は、夜勤時間数の計算の対象としないとされています。
何を「夜勤時間」として数えるか
通知では、各医療機関が「午後10時から翌日の午前5時までの時間を含めた連続する16時間」を夜勤時間帯として定め、その夜勤時間帯の間に現に勤務した時間数を「夜勤時間数」と呼びます。つまり数えるのは、夜勤のシフトの長さそのものではなく、夜勤時間帯に重なっている勤務時間です。
例えば夜勤時間帯を16時30分〜翌8時30分と定めている病院で、夜勤が16時〜翌9時の場合、夜勤時間数として数えるのは夜勤時間帯に重なる16時30分〜翌8時30分の部分です。夕方に始まる準夜勤なども、夜勤時間帯に重なる部分は夜勤時間数に入ります。
2交代の病棟も対象になる
「72時間は3交代の話で、2交代は関係ない」と思われていることがありますが、通知の要件は勤務の組み方で区別していません。2交代の長い夜勤は1回あたりの夜勤時間数が大きいため、むしろ回数が少なくても72時間に届きやすくなります。1回の夜勤で夜勤時間帯に重なる時間が16時間なら、月に4回で64時間、5回で80時間です。
計算方法:病棟全体の合計を、夜勤に入った人数で割る
月平均夜勤時間数は、同一の入院基本料を算定する病棟全体(同じ入院基本料の病棟が複数あれば、それらを合わせた全体)で、届出前1か月または4週間の看護職員の延べ夜勤時間数を、夜勤時間帯に従事した実人員数で割って求めます。
月平均夜勤時間数=病棟全体の看護職員の延べ夜勤時間数 ÷ 夜勤時間帯に従事した実人員数
ここで大事なのは、病棟(看護単位)ごとに計算するものではないという点です。通知でも、病棟ごとに72時間以下である必要はないと明記されています。ある病棟が72時間を超えていても、同じ入院基本料の病棟全体で72時間以下であれば要件は満たします。
分母・分子に含めない人、按分する人
- 専ら夜勤時間帯に従事する人(夜勤専従者)は、実人員数にも延べ夜勤時間数にも含めない
- 急性期一般入院基本料・7対1・10対1の病棟では、月の夜勤時間数が16時間未満の人は含めない(短時間正職員制度がある場合、短時間正職員は12時間以上なら含める)
- それ以外の病棟では、月の夜勤時間数が8時間未満の人は含めない
- 夜勤時間帯に病棟と外来などを兼務する人は、病棟で勤務した時間の割合で実人員数に按分する
- 夜勤時間帯の中で申し送りに要した時間は、申し送った看護職員の夜勤時間から除いてよい(除くかどうかは、原則として同じ入院基本料の病棟全体で月単位で選ぶ)
夜勤の少ない人を分母に入れるかどうかで、平均は大きく変わります。「夜勤に入れる人」ではなく、上の条件で「実際に数える人」を分母にする点に注意してください。
一時的に超えた場合
同じ通知では、月平均夜勤時間数について、暦月で3か月を超えない期間の1割以内の一時的な変動であれば、変更の届出は要しないとされています。ただし、恒常的に超えるようであれば、人員配置や勤務の組み方の見直しが必要です。
勤務表を組む段階でできること
- 自院の夜勤時間帯(連続16時間)を確認し、各勤務の「夜勤時間帯に重なる時間」を把握しておく
- 翌月の勤務表を組んだ時点で、同じ入院基本料の病棟全体の見込みを計算しておく
- 夜勤の回数が一部の人に偏ると、その人の負担だけでなく、分母の人数の数え方にも影響する
- 2交代の病棟は、1回あたりの夜勤時間数が大きいことを前提に回数を決める
当直シフトナビの看護の勤務表では、夜勤の回数の上限や、病棟の月平均夜勤時間の上限の目安を設定して、勤務表を作る段階で目安を超えていないかを確認できます。この目安は、その勤務表の夜勤の合計時間を夜勤に入れる人数で割って判定する簡易的なもので、上で説明した施設基準の正式な計算(病棟全体での合算、夜勤時間帯に重なる時間だけを数える、除外する人がいる)とは異なります。届出に使う数値は、必ず正式な方法で計算してください。
夜勤明けの日を休日として数えてよいかについてはこちらの記事で解説しています。