「今月、当直による時間外労働は何時間だったか」——2024年4月の医師の時間外労働上限規制開始以降、この問いに正確に答えられることが求められています。
当直の回数だけを数えて「先月より1回多いから大丈夫」と判断していると、実は上限に近づいていた、という事態になりかねません。
1回数の記録と時間外労働の集計は別物
当直の「回数」を記録するだけなら、Excelのチェック表でも十分です。しかし時間外労働「時間」を正確に出すには、回数以上に多くの条件を組み合わせる必要があります。
- その当直日が平日か休日か(所定労働時間が0時間か8時間かで換算が変わる。病院の換算ルールの場合で、法令上の時間外は法定労働時間との比較)
- 宿日直許可を受けている種別かどうか(基本時間の考え方が変わる)
- 翌日を休みにする運用か(その分を差し引いて見積もる換算ルールの病院もある)
- 翌日が平日か休日か(差し引く時間が変わる)
- お盆・年末年始等、病院独自の休業日や、逆に祝日でも通常営業する日
たとえば、宿日直許可が無く休憩を除いた拘束時間を労働時間として扱い、翌日を休みにした分を差し引いて見積もる病院独自の換算ルールの例では、「平日の当直(拘束16時間)で、翌日(平日)を休みにした場合」は8時間、「休日の当直(拘束24時間)で、翌日も休日」なら24時間まるごと時間外・休日労働として見積もります。
なお、法令上は、日をまたぐ勤務は始業した日の1日の労働として数えます。翌日を休みにしても、その日に法定労働時間を超えた部分が時間外でなくなるわけではありません(変形労働時間制などを除く)。ただし法定休日の労働かどうかは暦日(午前0時〜午後12時)で判断します。この例は、病院が予定を見積もるための換算ルールで、その値は法令上の時間外・休日労働より少なくなることがあります。
平日の当直で、翌日(平日)を休みに
休日の当直で、翌日も休日
同じ「当直1回」でも、平日か休日か、拘束時間の長さによって、見積もる時間は3倍違います(宿日直許可の有無や休憩の扱い、病院の換算ルールでさらに変わります)。
2手作業での集計の限界
① 条件分岐が多く、計算式が複雑になる
上記の条件を医師ごと・当直日ごとに毎回当てはめる計算式をExcelで組もうとすると、IF関数が何重にもネストした保守困難な数式になりがちです。
② 月をまたぐ当直の扱いが漏れやすい
月末の当直で翌月初日が休みになる場合、月次の集計表では月をまたいだ参照が必要になり、単純な月内合計だけでは正しい数字になりません。
③ 医師ごとの上限管理が後手に回る
個人ごとに時間外の月の上限(院内の目安)を設けていても、当直表を組んだ「後」に集計して初めて超過に気づく、という順序になりがちです。
本来は当直表を組む「時点」で超過しない組み合わせを選びたいところです。
3病院ごとのルールを「設定値」として整理する
条件分岐が多い問題は、計算式を都度書き直すのではなく、病院ごとに異なる部分を「設定値」として最初に整理してしまうと扱いやすくなります。
具体的には、次の3つに分けて考えると条件を洗い出しやすくなります。
所定労働カレンダー
当直種別ごとの基本時間
個人ごとの時間外の月上限
この3つさえ最初に決めてしまえば、あとは「当直日・種別・翌日の状態」を当てはめるだけの機械的な計算になり、医師が増えても計算式自体を書き直す必要がなくなります。
メディクミでできること
メディクミでは、この3つの設定値(所定労働カレンダー・種別ごとの基本時間・個人別の月上限)を一度登録しておくと、当直から生じる時間外の目安(予定にもとづく見積もり。日勤の残業や呼び出し後に実際に働いた時間は含みません)が当直ごとに算出され、医師ごとの当月合計・上限との差が一覧で表示されます。
自動作成でも上限を超えないように組むため、「組んだ後に超過が発覚する」のを減らせます。ただし、これは当直の予定にもとづく目安で、36協定や上限規制の時間外の集計そのものではありません。
4算出結果は「内訳」まで確認できるようにする
時間外労働の集計は、合計値だけを見せると「なぜその数字になったのか」が分からず、医師本人からの信頼を得にくくなります。
当直日ごとの内訳(平日/休日・翌日の状態・算出時間)まで確認できる状態にしておくことで、労務管理としての透明性を保てます。