臨床検査技師・診療放射線技師・薬剤師など、夜間・休日の緊急対応のためにオンコール(自宅などでの待機)を置いている部署は少なくありません。
次のような疑問を、公的な資料で確かめられる範囲で整理します。
- 待機している時間は労働時間になるのか
- 呼び出されたら、どこからが勤務か
- オンコール手当は必要か
結論:待機時間は「個別に判断」、呼び出し後に働いた時間は労働時間
- オンコールの待機時間が労働時間に当たるかは、待機中に労働から離れることが保障されているかどうかで、個別具体的に判断される
- 呼び出されて実際に業務に従事した時間は、労働時間に当たる
- 「オンコールは必ず労働時間になる」「必ずならない」と一律には言えない
1そもそも労働時間とは
最高裁判所は、労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、これに当たるかどうかは「労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない」と判断しています(平成12年3月9日第一小法廷判決)。
厚生労働省のガイドラインも同じ考え方で、次のような時間を労働時間として扱うべきものに挙げています。
使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
分かれ目は「労働から離れることが保障されているか」
院内・院外を問わず、また「待機」と呼んでいるかどうかにかかわらず、実態として労働から離れることが保障されているかどうかが分かれ目になります。この労働時間の考え方は、医師に限らず、すべての職種に共通です。2オンコール待機について厚生労働省が示している判断のしかた
オンコール待機について、厚生労働省は医師の働き方改革に関するQ&Aで、次のような点を踏まえて判断するとしています。医師についての資料ですが、判断の物差しは上の労働時間の考え方そのものです。
呼び出しの頻度
到着までの時間
待機中の活動の制限
オンコール待機時間が労働時間に該当するか否かは、オンコール待機中に求められる義務態様が、医療機関ごと、診療科ごとに様々であることから、・呼び出しの頻度がどの程度か、・呼び出された場合にどの程度迅速に病院に到着することが義務付けられているか、・呼び出しに備えてオンコール待機中の活動がどの程度制限されているか等を踏まえ、オンコール待機時間全体について、労働から離れることが保障されているかどうかによって、個別具体的に判断されることに留意すること。
たとえば、次の2つの場合では、評価が変わりうるということです。
呼び出しが少なく、制限も小さい
呼び出しが多く、制限も大きい
3裁判例:結論は事実関係によって分かれている
厚生労働省の資料は、オンコールについて「裁判例は、個別の実態を踏まえて、労働時間に該当すると認めているもの/認めていないものに分かれている。」としています。参考になる裁判例を2つ紹介します。
仮眠時間についての最高裁判決(平成14年2月28日 第一小法廷判決)
ビルの警備・設備管理の仮眠時間について、判決理由の中で「不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たる」と述べています。
実際に作業をしていない時間でも、労働時間になりうることを示した判決です。
県立病院の産婦人科医の事件(奈良地裁 平成21年4月22日判決。大阪高裁 平成22年11月16日判決が、平成25年2月12日の最高裁の上告不受理決定により確定)
院内での宿日直:通常の労働時間内の勤務と同等の労働が行われており、断続的な労働に当たらないとして、宿日直勤務全体が労働時間に当たるとされました。
自宅などで待機する「宅直」:労働時間に当たるとは認められませんでした。奈良地裁の判決は、宅直が医師の間の自主的な取り決めにすぎず、病院の内規にも定めがなく、病院が命じていたことを示す証拠はないことなどを理由に挙げています。
厚生労働省の資料では、呼び出しを受けて緊急に診療を行った場合には時間外手当が支払われていたことも紹介されています。
4呼び出されて働いた時間の扱い
オンコール待機中に実際の診療が発生した場合、当該診療に従事する時間は労働時間に該当する。
(個別に判断)
(労働時間)
(個別に判断)
オンコール当番の時間の扱いのイメージ
呼び出されて検査・撮影・調剤などを行った時間は、勤務表とは別に労働時間として記録します。そのうち、法定の労働時間を超える部分は時間外労働、法定休日の分は休日労働、午後10時〜午前5時の分は深夜労働として、割増賃金の対象になります。
| 労働の種類 | 割増賃金の率(労働基準法第37条・政令) |
|---|---|
| 時間外労働 | 2割5分以上(1か月60時間を超えた部分は5割以上) |
| 法定休日の労働 | 3割5分以上 |
| 午後10時から午前5時までの深夜の労働 | 2割5分以上 |
36協定の上限
医師の特例(労働基準法第141条)は「医業に従事する医師」に限られるため、臨床検査技師・診療放射線技師・薬剤師には一般の上限(協定で定める時間外労働は原則1か月45時間・1年360時間。実際の時間外・休日労働の合計は、特別条項の有無にかかわらず1か月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内など)が適用されます。呼び出し後に働いた時間も、この時間に含めて管理します。移動時間について
呼び出しを受けてから病院に着くまでの移動時間の扱いについて、厚生労働省が示した見解は、当社が確認した範囲(2026年10月時点)では見当たりませんでした。自院でどう扱うかは、就業規則などで定めたうえで、社会保険労務士や監督署に確認しておくと安心です。5オンコール手当(待機手当)は必要か
労働基準法やその施行規則には、オンコールの待機そのものに対する手当(オンコール手当・待機手当)について定めた規定はありません。手当を設けるかどうか、いくらにするかは、就業規則や賃金規程で定めることになります。
また、割増賃金の計算の基礎になるのは「通常の労働時間又は労働日の賃金」(労働基準法第37条第1項)で、そこから家族手当・通勤手当など法令で定めた賃金を除きます(同条第5項・施行規則第21条)。
オンコール手当がこの基礎に入るかどうかは、所定の労働時間に対する賃金か、所定外の待機に対する手当かという性格や、月決めか1回ごとかといった払い方によって変わりうるため、社会保険労務士や監督署に確認してください。
勤務表と記録で押さえておきたいこと
- オンコールの当番を、勤務表の上で当直・日直とは別の勤務として管理する
- 待機中のルール(到着までの時間の目安、待機場所の制限など)を文書で明確にしておく
- 呼び出しの回数と、呼び出し後に働いた時間を記録する
- 呼び出しが多い当番が特定の人に偏らないよう、回数の上限や間隔を決める
- 呼び出しの頻度が増えてきたら、待機の扱い(労働時間に当たらないか)や体制そのものを見直す
メディクミでできること
メディクミでは、当直・日直・オンコールを別々の勤務として登録し、当直・オンコールそれぞれの月の上限回数と、前の勤務からあける日数を設定できます。「当直の前日・翌日にはオンコールを入れない」設定もあり、設定した条件に沿って勤務表を自動で作れます。職員ごとの勤務回数は月単位で一覧できます。関連する記事
- 検査部・放射線部の当直とオンコールの組み方:臨床検査技師・診療放射線技師の記事
- 薬剤部の当直表:病院薬剤師の記事
- 当直・宿直・日直・夜勤の違い:当直とは?の記事
参考資料
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日 基発0120第3号)
- 厚生労働省 医政局医事課 事務連絡「医師の働き方改革に関するQ&A」(令和6年7月23日)
- 厚生労働省「オンコールの取扱いについて」(医師の働き方改革に関する資料)
- 厚生労働省 第2回 医師の働き方改革に関する検討会 資料2「労働基準法上の労働時間法制について」(平成29年9月21日。奈良県立病院産科医師事件の紹介は p.14)
- 最高裁判所 平成12年3月9日 第一小法廷判決(平成7(オ)2029、三菱重工業長崎造船所事件)
- 最高裁判所 平成14年2月28日 第一小法廷判決(平成9(オ)608、大星ビル管理事件)
- 奈良地方裁判所 平成21年4月22日 判決(平成18(行ウ)16)
- 労働基準法(e-Gov 法令検索)
- 労働基準法施行規則(e-Gov 法令検索)